カレンダーにまつわる通説
株式市場にはカレンダーにまつわる通説がたくさんあります。11月から4月が強く5月から10月は弱いという「5月に売って立ち去れ」、1月がほかの月より強いという「1月効果」、9月は弱いという話、年末年始の数日が強いという「サンタクロース・ラリー」などです。こうした話はもっともらしい説明とともに毎年戻ってきますが、自分が見ている指数や銘柄で実際にそうだったのか、その差が偶然でもよく生じる程度なのかは、別に確かめる必要があります。この記事では、月別の季節性をデータで測る方法と、数字をもっともらしく見せる落とし穴を整理します。
季節性の測り方
月次リターンは、その月の最後の終値 ÷ 前月の最後の終値 − 1で計算します。これを年 × 月の表に並べ、同じ月同士を縦に集めると、月ごとの平均・中央値・上昇確率(プラスだった年の割合)が出せます。個別銘柄は、配当を除いた価格で測るか配当を再投資した調整後終値で測るかによって配当が集中する月の値が変わるので、基準を決めておきます。数字ひとつだけを見ず、以下を並べて見ます。
平均:大きく上げた、または下げた一年に引っ張られやすい 中央値:ふつうの年がどうだったかに近い 上昇確率:上がった年の割合。全月の上昇確率と比べる 標本数:その月の値が何年分から出たか 平均の標準誤差:月次リターンの標準偏差 ÷ √標本数。平均が偶然どれだけ揺れうるか
標本は思ったより少ない
月別の季節性の最大の問題は標本数です。30年の記録なら、各月の標本は30個しかありません。このサイトの株式・指数の月別リターンツールでは、韓国の総合株価指数の月足は1997年からなので、各月の標本は30個前後です。標本が少ないと、平均は偶然だけでもかなり揺れます。例として、月次リターンの標準偏差が5%で標本が30個なら、平均の標準誤差は 5 ÷ √30 ≈ 0.91ポイントです。二つの月の平均が1ポイントほど違うというだけでは、偶然と見分けにくいということです。差が標準誤差の2倍ほどを超えてはじめて注目に値し、それでも以下の落とし穴が残ります。
何度も測れば一つは引っかかる
12か月を一つずつ「ほかの月と違うか」と検定すると、実際には何の差もなくても、偶然違って見える月が出やすくなります。各検定で偶然引っかかる確率を5%とし、互いに独立だとすると、12回のうち一つ以上引っかかる確率は 1 − 0.95の12乗 ≈ 46%です。指数を複数見て、曜日や月中の日付まであわせて見れば、検定の回数はずっと増えます。その中で目立つマスだけを選んで語れば、もっともらしい通説は簡単に作られます。そのため「見つけたパターン」ではなく「前もって決めた一つの仮説」を確かめる形で見るほうがだまされにくくなります。たとえば5〜10月と11〜4月の比較のように、名前のついた通説を一つ決めて測るのです。
数字を信じる前に確かめること
ある月が本当に違って見えるなら、以下の順でもう一度確かめます。一つでも通らなければ、そのパターンはまだ偶然の可能性が高い形として置いておきます。
平均だけでなく中央値と上昇確率も同じ方向を指しているか 期間を前半と後半に分けても同じ形が残るか ほかの指数やほかの国の市場でも似ているか 最も大きく動いた一、二年を除いても差が残るか 売買コストと税金を入れても差が残るか
市場の外にいる間のコスト
「5月に売れ」のような戦略は、比べる相手をきちんと決める必要があります。5〜10月の平均が11〜4月より低くても0より高いなら、その期間市場の外にいる間にそのリターンを逃すことになります。比較は「売った後は0」ではなく「そのまま持っていた場合」とするべきです。売って買い戻す売買のたびに手数料や気配値の差、韓国株の証券取引税、海外株の譲渡所得税がかかり、市場の外にいる間に配当を受け取れないこともあります。また広く知られたパターンは、多くの人が先回りして動くことで弱まったり前倒しになったりすることがあります。説明がもっともらしいことと、実際にコストを引いても残ることは別の問題です。
季節性の数字が役立つところ
季節性の統計は売買のタイミングを決めてはくれなくても、役に立たないわけではありません。今月の動きが過去の同じ月の範囲の中にあるか外にあるかを見れば、いまが特別な月か平凡な月かを見積もる参考になります。年末配当や会計年度のようにカレンダーに結びついた実際の日程がある銘柄なら、その日程が価格の記録にどう残るかを確かめるのにも使えます。そして、ほかの人が主張する通説を検証するのに最も役立ちます。誰かが「9月はいつも弱い」と言うとき、何年分の記録で、平均なのか中央値なのか、何回そうだったのかを尋ねられるようになります。業種ごとに変わる流れは「セクターの流れの読み方」の記事もあわせて見てください。
このサイトのツールで見る
このサイトの株式・指数の月別リターンは、韓国の総合株価指数・コスダック・S&P 500・ナスダック・ダウ・日経平均のような指数や、サムスン電子・アップルのような銘柄の月足の全記録で年 × 月のリターンのヒートマップを描き、月ごとの平均・中央値・上昇確率・標本数と平均の標準誤差を表示します。通説チェックの欄では、11〜4月と5〜10月、1月とほかの月、9月と全月、年末年始の7営業日といった比較を基準値と並べて測り、曜日別・月中の営業日別の統計には t 値をつけます。多くのマスを一度に測ると偶然でも t 値が2を超えるマスが出ることは、ツールの案内にも書いてあります。データでパターンを見るときに生じる錯覚は「チャート分析の限界とよくある錯覚」の記事にさらにあります。
限界とお断り
月別の季節性は、過去の期間に月ごとにどんな結果が出たかをまとめた記録にすぎず、翌年の同じ月を予告するものではありません。記録の長さ、選んだ指数、配当を含むかどうかで結果が変わり、データ提供元の値は遅れたり修正されたりすることがあります。この記事の標準誤差の計算は、仕組みを示すための例の数字です。この記事はカレンダーの通説をデータで確かめる方法を説明したもので、特定の時期の売買を勧めるものではなく、投資助言ではありません。
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